2011年3月20日日曜日

不当な解雇(リストラ)の裁判例

今回は、不当解雇(リストラ)について判断している裁判例を紹介します(つづき)。 

ウ 再雇用拒否理由2について
(ア)証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
 原告は、編集局第1編集部員であったが、本件懲戒処分による出勤停止期間が明けた平成18年9月6日、同日付けの辞令によって、被告から編集局長付編集員を命じられたため、F編集局長の直属の部下となった。しかし、原告の席位置は、従前と変わらず、第1及び第2編集部合同の部屋内にあった。
 平成19年8月当時、被告の編集局は、第1ないし第5編集部及び編集総務部から構成され、各部共に被告の入居する建物3階に所在していた。原告の席位置は、従前のまま、第1及び第2編集部合同の部屋内にあった。被告は、同月9日、編集局臨時全体会議において、次期の人事異動に併せて、編集局内の各編集部の垣根を低くし、意見交換を活発化させ企画力を強化することなどを企図して、同年9月28日付けで、第1及び第2編集部合同の部屋に新たに第3編集部を同居させることなどを中心とする新たな部屋の配置に伴う職員の席の移動を実施することを決定した(以下「本件席移動」という。なお、同月14日、本件席移動の日程は同年10月31日に延期された。)。本件席移動によって、原告の席は、第1及び第2編集部合同の部屋から編集総務部の部屋に移動することが予定されていた。そこで、被告は、同月6日及び7日、原告に対し、本件席移動の趣旨を説明して原告の了承を求めたものの、原告は、間もなく、自らの人事異動があったわけでもないし、手持ちの業務にも支障を来すとの理由で、本件席移動には直ちに応じられないとの意向を示した。そのような中、同年10月31日、本件部屋移動が実施され、その際、編集総務部内には、原告席が空席のまま確保された。原告は、同日、第1及び第2編集部合同の部屋の自らの席に荷物を残したまま、当面の業務に必要な資料等のみを持ってコピー室内の作業台に席を移動し、そのまま同場所において執務を続けていたが、このような原告の所為に対して、被告が原告にコピー室からの退去を命ずる業務命令を発したり、何らかの懲戒処分を検討したりした形跡はない(被告は、編集総務部長G名義の平成19年10月16日付け「部屋移動の件」と題する書面(書証略)をもって、本件部屋移動を業務命令として命じた旨主張するが、同書面は、その記載内容から、本件部屋移動の段取りについての注意事項を掲載したものにすぎないといえるし、同書面がどのような形で原告に示されたのかも明らかでないから、同書面をもって原告に対する本件部屋移動の業務命令と解することはできない。)。
 その後、平成20年7月1日付け人事異動に伴い、編集総務部の原告用に確保された席に他の職員が着くこととなった。そこで、被告は、同年6月5日及び同月9日、原告に対し、上記人事異動に伴う席の移動の必要性を説明してその了解を得るため、改めて原告との打合せの機会を設け、第1及び第2編集部合同の部屋にある原告の荷物の撤去とコピー室の明け渡し、第3編集部の部屋への移動を求めたものの、原告は、これを拒否し、その後、コピー室から編集会議室に荷物を移動し、平成21年3月31日に定年退職するまでの間、同場所において執務した。
(イ)上記(ア)の事実によれば、被告の本件席移動の理由には、一定の合理性が認められるにもかかわらず、原告は、被告による再三にわたる本件席移動に基づく席の移動の依頼に応じず、自らの執務の都合ばかりを主張してこれに従わなかったことが認められ、これを原告の協調性又は規律性の欠如の現れの一端と評価することも可能である。反面、被告も、本件席移動に関して、原告に対し、一貫して、被告の方針に理解を求めつつ任意の席移動を求める態度に終始するばかりで、席の移動を命ずる業務命令を発したり、本件席移動の拒否を理由に原告の懲戒処分を検討したりした形跡もなく,長期間にわたって問題を放置したことが認められる。被告のかかる態度に徴すると、その当時、本件席移動に関する問題について、原告は、その重要性をおよそ認識していなかったものと解されるし、翻って、被告においても、さほど重視していなかったものと評価せざるを得ない。
 上記判示の事情にかんがみれば、再雇用拒否理由2の事実をもってしても、原告には、職務上備えるべき身体的・技術的能力を減殺するほどの協調性又は規律性の欠如等は認められず、再雇用就業規則3条(2)所定の「能力」がないと認めることはできない。 
(3)以上によれば、本件再雇用拒否は、原告が再雇用就業規則3条所定の要件を満たすにもかかわらず、何らの客観的・合理的理由もなくなされたものであって、解雇権濫用法理の趣旨に照らして無効であるというべきである。そうすると、原告は、再雇用就業規則所定の取扱い及び条件に従って、被告との間で、再雇用契約を締結することができる雇用契約上の権利を有するというべきであるから、原告の平成19年7月30日付け再雇用契約の申込みに基づき、原被告間において、平成21年4月1日付けで再雇用契約が成立したものとして取り扱われることになるというべきである。
 したがって、原告が被告に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることが認められる。
第4 結論
 よって、原告の本訴請求は理由があるから認容することとし、主文のとおり判決する。
なお、不当解雇(リストラ)についてお悩みの方は、専門家である不当解雇(リストラ)を扱う弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事弁護を要する刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。