2009年2月23日月曜日

残業代請求・サービス残業

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

二 争点
1 原告らの終業時刻(割増賃金(残業代)の起算点)
2 原告らの時間外労働(残業)等及び固定残業給を超える割増賃金(残業代)の有無
3 原告らと被告とは、本件未払割増賃金(残業代)問題について、争わない旨の合意をしたか。
4 本件未払割増賃金(残業代)請求権の消滅時効の成否
5 遅延損害金請求権の有無
6 付加金支払義務の有無
三 当事者の主張
1 原告らの終業時刻(割増賃金(残業代)の起算点)について
(原告らの主張)
 被告における従業員の終業時刻は午後五時であり、割増賃金(残業代)の起算点も同様に午後五時である。
(被告の主張)
 被告における従業員の終業時刻は午後六時であり、原告の主張は否認する。
2 原告らの時間外労働(残業)等及び固定残業給を超える割増賃金(残業代)の有無について
(原告らの主張)
(一)原告是村の本件請求期間における時間外労働(残業)時間数(但し、起算点は午後五時)、午後一〇時以降は労働時間数及び賃金の時間単価は別表2〈略、以下同じ〉未払賃金等計算表1のとおりであり、「時間外労働(残業)時間数」から二四を差し引いたのが同表の「二四時間を超える労働時間数」であり、給与規定一八条、一九条に基づき同表の「賃金の時間単価」に一・二五を乗じたのが同表の「割増賃金(残業代)の時間単価」である。そして、同表の「二四時間を超える労働時間数」に「割増賃金(残業代)の時間単価」を乗じたもの(「未払時間外割増賃金(残業代)」)と「午後一〇時以降の労働時間数」に「賃金の時間単価」を乗じ、さらに、〇・二五を乗じたもの(「未払深夜割増賃金(残業代)」)との和が同表の「未払賃金額」である。こうして得られた本件請求期間中の各月の未払賃金額の合計は、同表の「未払賃金額」の計欄に記載のとおり、三〇万五七六一円になる。
 なお、同表の「時間外労働(残業)時間数」及び「午後一〇時以降の労働時間数」は、個人別出勤表に基づくもので、一五分ごとに〇・二五時間ずつ加算される計算方法による。また、同表の「賃金の時間単価」は給与支給明細書(1)中の「超勤単価」欄に基づくものである(一部請求)。但し、同明細書によれば、原告是村の平成元年三月二一日以降同年五月二〇日までの賃金の時間単価は、それ以前と変更がないが、実際は、同年六月二四日支給の賃金において、同年三月二一日に遡って、別表2未払賃金等計算表1の「賃金の時間単価」欄記載のとおり、変更された。
 その他の原告らの本件請求期間における時間外労働(残業)時間数(但し、起算点は午後五時)、午後一〇時以降の労働時間数、賃金の時間単価(但し、原告是村と同様、給与支給明細書(1)中の「超勤単価」欄によれば、原告川田、同小高、同西村、同三島、同庄司、同西脇の平成元年三月二一日以降同年五月二〇日までの賃金の時間単価は、それ以前と変更がないが、実際は、同年六月二四日支給の賃金において、同年三月二一日に遡って、別表2未払賃金等計算表3、4、9、12、16、19の「賃金の時間単価」欄記載のとおり、時間単価が変更された。)は別表2未払賃金等計算表2ないし19の各所定欄記載のとおりであり、前記の方法により計算すると(但し、第四作業部に所属する原告庄司、同西脇、
同榎本、同金子、同田邊、同豊島については、時間外労働(残業)時間数から差し引く時間数を二八とする。)、別表2未払賃金等計算表2ないし19の「未払賃金額」の計欄に記載の各金額となる。
(二)原告らのなした時間外労働(残業)等は被告の明示又は黙示の指示に基づくものである。
(三)よって、原告らは、被告に対し、別表2未払賃金等計算表1ないし19の未払賃金額の計欄に記載のとおりの時間外労働(残業)等の割増賃金(残業代)を請求する権利を有する。
(被告の主張)
(一)タイムカードは、従業員の出・退勤の状況を把握し、あるいは、勤怠管理の一助にするという目的で従業員に打刻させていたものであり、被告が従業員の時間管理をしていた事実はない。また、原告らのタイムカードの記載から計算される労働時間は原告らの現実の労働時間ではない。さらに、原告らは、所定労働時間中、手待時間があったことはもとより、多々公私混同の行動があり、あるいは全く業務を行うことなく時間を徒過するなどしており、タイムカードの記載から計算される労働時間は、現実の労働時間と大きく乖離したものである。
(二)被告は、原告ら営業部所属従業員及び第四作業部所属従業員等業務の性質上時間管理が不可能又は困難な従業員に対しては、割増賃金(残業代)算出の基礎となるべき時間管理を全く行わず、割増賃金(残業代)の支払いに代えて本件固定残業制度を実施し、固定残業給を支払ってきた。この取扱いは、昭和三〇年代初頭から実施してきたものであり、その長期にわたる実施期間、継続実施回数、対象者数及びその間適用対象者が右実施について何ら異議を述べなかったこと等に照らすと、本件当時、適用対象従業員は、本件固定残業制度によって生じる不利益を受忍する意思を有しており、本件固定残業制度は労働契約の内容になっていた。あるいは、被告と訴外組合が、本件固定残業制度について度重なる協議を行い、協定書等も作成してきたという経緯に照らせば、本件固定残業制度は、労働協約上の根拠を有していた。さらには、前記事実経過に照らすと、本件固定残業制度は、被告と適用対象従業員との間で法規範性を有する労使慣行となっていた。したがって、原告らに、本件固定残業給の他に割増賃金(残業代)が生じる余地はない。
(三)本件固定残業制度の適用対象者は、定められた固定残業時間の範囲内で時間外労働(残業)等を行うべきであり、かつ、被告が原告らに対し、固定残業時間を超えて時間外労働(残業)等を命じた事実はない。
(四)時間外労働(残業)等の割増賃金(残業代)の支払いは、労働基準法三七条所定の計算方法を用いなくても、同条所定の額以上の割増賃金(残業代)の支払いがなされれば適法と考えられるところ、本件固定残業制度は、当該月に時間外労働(残業)等がなくても一定額の固定残業給を支給するというものであり、適用対象者に利益になる場合もあるのであるから、原告らの主張は理由がない。また、本件固定残業制度により、原告らに賃金上の不利益があったとしても、現実の時間外労働(残業)等により発生する割増賃金(残業代)を超える固定残業給を得たことがあったことや終業時刻前の帰宅を認める被告の事実上の取扱いやその後の交渉による労働時間短縮等(締結主体は訴外組合であるが、非組合員たる原告らにも適用されると解する。)によって著しい利益を受けているから、原告らの主張は法的に許されない。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。