2009年11月23日月曜日

残業代請求

今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。

七 原告薄の請求について
1 被告は、原告薄に対し、法内残業時間については、通常の労働時間の賃金を、法外残業時間については、右賃金の三割増(三級以下給与規定一九条三項〔〈証拠略〉〕)の割増賃金(残業代)を支払う義務があるところ、右時間給を検討する。
 右時間給計算の基礎となる一か月の原告薄の給与額について、年令給、勤続手当及び地域手当がこれに含まれることについては当事者間に争いがないが、被告はこれに歩合給が含まれない旨主張するので判断する。三級以下給与規定一九条五項〔〈証拠略〉〕は、時間給の計算方法について、歩合給を含める旨を規定していないものの、歩合給は、労基法三七条二項及び労基法施行規則二一条で定められた割増賃金(残業代)の基礎となる賃金から除外することが許されている賃金に含まれないことは明らかであるから、歩合給も右計算の基礎として加算すべきものである(法内残業及び法外残業のいずれも同様であることは前述のとおり)。ところで、原告薄は、時間給を計算するにあたり、一か月分の年令給、勤続手当、地域手当及び歩合給の合計額を一か月の所定労働時間である一四八時間(三級以下給与規定一九条五項〔〈証拠略〉〕)で除すべきであると第一次的に主張している。しかしながら、労基法施行規則一九条一項七号によれば、給与に月給部分(歩合給以外のもの、本件では年令給、勤続手当及び地域手当の合計)と歩合給部分の両方が存する場合には、月給部分を一か月の所定労働時間数で除した金額(同項五号、但し本件においては一四八時間〔三級以下給与規定一九条五項、この時間数については当事者間に争いなし〕と歩合給部分を一か月(本件)の総労働時間数で除した金額(同項六号)との合計額を時間給として算出し、これに基づき計算すべきものであると認められる(原告薄が第二次的に主張している計算方法〔月給部分及び歩合給部分の合計額を総労働時間数で除するというもの〕も採用できない)。したがって、法内残業については、右時間給に法内残業時間数を乗じた額、法外残業については、右時間給の三割増の金額に法外残業時間数を乗じた額が、被告が原告薄に支払うべき金額となる。
2 原告薄の時間外及び休日労働の労働時間については、別紙賃金一覧表一2(又は賃金一覧表二1)記載の各年月日の法内残業時間数及び法外残業時間数のうち、被告が時間数を争っている部分について判断する(当事者間に争いのない部分はこれを前提に算定する。なお、平成三年六月二九日の土曜休日出勤に関しては、法内残業時間五時間、法外残業時間二時間の主張〔第二次的主張、別紙賃金一覧表二1〕について争いがないものと解されるので、右時間数を前提に算定し、平成三年七月一三日の土曜休日展覧会に関しては、法内残業時間六時間四五分、法外残業時間一時間の主張〔第一次的主張、別紙賃金一覧表一2〕について争いがないものと解されるので、右時間数を前提に算定する)。
 平成三年七月一二日の展覧会については、午前九時三〇分から午後八時まで勤務したものと認められるところ(〈証拠略〉)、午後五時四五分から七時までの一時間一五分が法内残業時間、午後七時から午後八時までの一時間が法外残業時間と認められる(始業時間が三〇分遅いので午後五時一五分〔午後五時から五時一五分は休憩時間〕から三〇分終業時間を繰り下げて計算されるべきものである)。
 平成四年三月二九日の日曜出勤特販支援について、労働時間と認められることは前記判断のとおりであり(〈証拠略〉)、午前一〇時から午後八時三〇分まで勤務したものと認められるところ(〈証拠略〉)、正午から午後一時、午後三時から三時一五分及び午後五時から五時一五分の休憩時間一時間三〇分を除いた時間数のうち、少なくとも原告主張の六時間四五分の法外残業時間が認められる。
3 原告薄の各月の総労働時間数については、別紙総実労働時間認否書記載のとおり、平成三年七月以外は当事者間に争いがないので、平成三年七月について検討する。平成三年七月一二日の労働時間数は、前記判断のとおり(七2)、午前九時三〇分から午後八時までの一〇時間三〇分から休憩時間の一時間三〇分(正午から午後一時、三時から三時一五分、五時から五時一五分)を引いた九時間であるところ、原告はこれを九時間一五分で計算しているから(弁論の全趣旨)、平成三年七月の総労働時間数は、原告主張の二四三時間一八分から一五分を引いた二四三時間三分であると認められる(被告主張の時間数)。

4 したがって、原告薄は、別紙賃金一覧表三2記載の各年月日に、法内残業時間数については「所定内時間」欄記載のとおり、法外残業時間数については「所定外時間」欄記載のとおり、時間外又は休日労働を行ったものと認められる(前記七2で認定したもの以外は当事者間に争いがない)。そして、「月給」欄記載の金額が右各年月日における一か月の年令給、勤続手当及び地域手当の合計額であり(金額については当事者間に争いがない)、これを一四八時間で除したものが月給部分の時間給(但し小数点第四位以下を四捨五入)であり「時給A」欄記載のとおりである。また、「歩合給」欄記載の金額(金額は〈証拠略〉及び弁論の全趣旨により認められる)を「月間総労働時間」欄記載の一か月の総労働時間数(前記七3で認定したもの以外は当事者間に争いがない)で除した金額が「時給B」欄記載の歩合給の時間給(但し少(ママ)数点第四位以下を四捨五入)である。「時給C」欄は「時給A」欄と「時給B」欄の合計である。そして、右各年月日における法内残業に対応する賃金額は「法内賃金」欄記載のとおりであり(「時給C」欄記載金額に「所定内時間」欄記載の時間数を乗じて小数点以下を四捨五入したもの)、法外残業に対応する賃金額は「法外賃金」欄記載のとおりであり(「時給C」欄記載金額に一・三を乗じ、さらに「所定外時間」欄記載の時間数を乗じて小数点以下を四捨五入したもの)、その合計は「合計」欄記載のとおりである。ところで、平成三年六月二九日分の「合計」欄記載の額は六四〇七円であるが、原告薄は右部分につき四九八五円のみを請求しているから(別紙賃金一覧表二1)、この部分を修正したものが「修正合計」欄記載の金額である。したがって、原告薄の請求については、右合計の五万七七〇一円の範囲で理由がある。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。