2009年2月21日土曜日

時間外勤務手当の請求

今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

三 当事者の主張
(原告らの主張)
1(一)被告の給与規定及び労基法によれば、時間外及び休日手当の基礎となる時間給(但し割増前のもの)は、原告平については、(年令給+資格給+地域手当+職務手当〔主任手当〕+住宅手当+業績手当)÷一四八時間であり(給与合計額を月間の労働時間で除した金額)、原告薄及び同小峰については、(年令給+勤続手当+地域手当+歩合給)÷一四八時間である。なお、月間の労働時間については、三級以下給与規定一九条五項、四級以上給与規定二二条六項により一四八時間と規定されている。
(二)各原告は、別紙賃金一覧表一1ないし3の「年月日」欄の記載日に「勤務内容」欄記載のとおり(原告小峰について土曜展覧会とあるのは土曜休日展覧会のことである)、時間外及び休日労働に従事した。同表の「時間外時間」欄の「原告計算」欄における「所内」欄記載の時間数は、就業規則で定める所定労働時間を超えて法定労働時間以内の労働(本件では原則として六時間四五分を超えて八時間以下)又は就業規則等で定める休日で法定休日以外の日の労働(以下、これらを法内残業という)における時間数であり、「所外」欄記載の時間数は、法定労働時間を超える労働(本件では原則として八時間を超えた場合)又は法定休日における労働(以下、これらを法外残業という)における時間数である。そして、各原告の法内残業の賃金額は、同表「原告請求」欄の「給与」欄のうち「給計」欄記載の金額を、前項記載の一四八時間で除した金額である「時給」欄記載の金額に、「時間外時間」欄の「原告計算」欄における「所内」欄記載の時間数を乗じた金額、すなわち「原告請求」欄の「請求額」欄のうち「所内」欄記載のとおりの金額(以下、法内賃金ともいう)である。また、各原告の法外残業の割増賃金(残業代)は、争いのない事実4記載のとおり時間給の三割増の割増賃金(残業代)が支払われるべきものであるから、「時給」欄に一・三を乗じ、さらに「時間外時間」欄の「原告計算」欄における「所外」欄記載の時間数を乗じた金額、すなわち、「原告請求」欄の「請求額」欄のうち「割増」欄記載のとおりの金額(以下、法外賃金ともいう)である。法内賃金及び法外賃金の合計額は「原告請求」欄の「請求額」欄のうち「計」欄記載のとおりであり、その総合計は、原告平が二六万一〇九五円、同薄が六万二〇二八円、同小峰が一五万九八二五円である(なお、原告薄及び同小峰については第一次的な計算方法に基づく請求額)。
2 原告薄及び同小峰は、時間外及び休日手当について、右1に基づく計算方法が認められない場合には、次の計算方法に基づきこれを主張する。すなわち、前項では月間労働時間を三級以下給与規定により一四八時間として計算したが、これが認められないとすると、労働基準法施行規則(以下、労基法施行規則という)一九条一項六号により、時間外及び休日手当を請求する当該各月の総労働時間数を算出し、これを基礎として計算した金額を二次的に請求する。具体的には、原告薄及び同小峰の時間外及び休日手当を請求する当該各月の総労働時間は、別紙総実労働時間認否書の「原告計算」欄記載のとおりであり、これに基づき計算すると、原告薄及び同小峰の法内賃金は、別紙賃金一覧表二1及び2「原告計算」欄の「給与」欄のうち「給計」欄記載の金額(歩合給を含む四項目の合計)を当該月の総労働時間数で除した金額である「時給」欄記載の金額に、「時間外時間」欄の「原告計算」欄における「所内」欄記載の時間数を乗じた金額、すなわち「原告請求」欄の「請求額」欄のうち「所内」欄記載のとおりの金額であり、法外賃金は、「時給」欄に一・三を乗じ、さらに「時間外時間」欄の「原告計算」欄における「所外」欄記載の時間数を乗じた金額、すなわち「原告請求」欄の「請求額」欄のうち「割増」欄記載のとおりの金額である。法内賃金及び法外賃金の合計額は「原告請求」欄の「請求額」欄のうち「計」欄記載のとおりであり、その総合計は、原告薄が四万一四六〇円、同小峰が一五万七七〇三円である(原告薄及び同小峰についての第二次的な計算方法に基づく請求額)。
3 争点1について
(一)四級以上給与規定一条によれば、「特に定める場合」を除き、同規定二二条に定める時間外及び休日手当に関する規定が適用されることになっているが、別に何ら特別の定めはないから、原告平には右規定が適用され、前述の時間外及び休日手当の支給がなされるべきである。
(二)被告は、原告平が労基法四一条二号の管理監督者に該当する旨の主張をするが、原告平は販売主任であって規定上も「指導職」であり「管理監督職」とは異なること、東京南支店における売上集計等は事務作業であり、原告平以外に吉田及び佐藤課長も行っていたこと、同支店におけるタイムカードの管理については新入社員について一時期押印していた以外には行っていないこと、支店長会議への出席は単なる営業会議への出席に過ぎないこと、給与も支店長に比較して少ないこと等から、管理監督者に該当しないことは明らかである。
4 争点2について
(一)プロモーター社員に関する就業規則三二条二項但書の「事業所外勤務のため、前項の終業時刻を超えた場合、通常の労働時間勤務したものとみなす」との規定は、展覧会での販売については、労基法三八条の二の「労働時間を算定し難いとき」との要件に該当せず、無効であるから、前述のとおり、時間外手当(残業代)を請求できる。
(二)展覧会での販売業務は、被告の指揮監督のもと、顧客との対応、契約の締結、その結果の整理、鑑賞券の通行人への配付等が行われており、開催時間も決まっていること、支店長等の現場責任者が展覧会場へ赴いているうえ、グループ(展覧会場で勤務している従業員相互)により労働時間も管理されていること、展覧会中のほとんどの時間が実作業時間であり、その間の時間は手待時間であることから、労基法三八条の二の「労働時間を算定し難いとき」には該当しない。
(三)展覧会での販売業務への参加が強制されていないとの被告の主張は、労基法三八条の二の要件とは直接には関係しない。また、そもそも展覧会での販売業務は被告の積極的な参加の呼びかけによってプロモーター社員が参加して販売活動に従事しており、自発的な自由参加であるということは全くない。
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