2009年7月24日金曜日

時間外勤務

今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

 以上のとおり、給与支給明細書(1)中の支給額欄中の「その他」欄の記載は、改定前後の賃金の差額の二か月分と完全に一致することが認められ、かつ、他の支給日の「その他」欄の記載のほとんどは〇であり、記載がある場合もその金額は平成二年六月の記載の金額に比し相当少額であること、「その他」欄の記載のうち、右七名全員について〇以外の記載があるのは平成二年六月のみであること、この点について被告は何らの反証をしないこと等に鑑みると、原告らの主張のとおり、原告是村、同川田、同小高、同西村、同三島、同庄司、同西脇の平成元年三月二一日以降同年五月二〇日までの賃金の時間単価は、給与支給明細書(1)中の「超勤単価」欄の記載にもかかわらず、実際は、同年六月二四日支給の賃金において、同年三月二一日に遡って、別表1未払賃金等計算表1、3、4、9、12、16、19の「賃金の時間単価」欄記載のとおり、変更されたものと認めるのが相当である。
7 以上に述べたところから、原告らには本件請求期間中、固定残業時間を超える時間外労働(残業)等が存する。そして、前示のとおり、被告における従業員の終業時刻及び割増賃金(残業代)の起算点は、午後六時とすべきであるので、午後六時を起算点として、個人別出勤表に基づいて原告らの時間外労働(残業)等及び未払割増賃金(残業代)を計算すると、別表1未払賃金等計算表1ないし19のとおりである(なお、前記争いのない事実に記載のとおり、被告給与規定一八条但書には、「但し、週平均実働四十八時間以内の時間外勤務(残業)に対する手当の計算においては次式の乗数を一とする。」という規定があり、この規定の意味するところは一見明確ではないものの、一日の所定時間外に労働した場合であっても、当該日の属する一週間の実労働時間が四八時間以内であるときには、右時間内の労働に対して支払われるべき賃金の計算においては割増率を加算する必要がないという趣旨と解されるが、右規定の適用については、被告の主張がない。)。
三 原告らと被告とは、本件未払割増賃金(残業代)問題について、争わない旨の合意をしたか否か

1 右の合意については、本件全証拠によってもその存在を認めることはできない。
2 これに対し、被告は、被告と訴外組合は、平成三年六月二一日、都労委の斡旋案を受諾し、同月二八日に協定書の作成・調印を行う中で、原告らの未払割増賃金(残業代)問題について、今後一切請求せず、争わない旨を合意したと主張する。
 たしかに、協定書(〈証拠略〉)の九項には「一九九一年三月一九日・・・付け回答書の通りである・・・。」との記載があり、平成三年三月一九日付け回答書(〈証拠略〉)の一項一号の「現行の一日八時間の所定労働時間を一日七時間とする。但し、後記(5)の『固定残業制度』の廃止及びこれに伴う諸問題の解決を条件とする。」という記載及び同項五号の「『固定残業制度』は廃止し、これに伴う諸問題を解決すること。」という記載中の「これに伴う諸問題」に本件未払割増賃金(残業代)問題が含まれるとすると、回答書の記載からは、固定残業制度の廃止と本件未払割増賃金(残業代)問題を一括して解決することが予定されていたようにも考えられ、そうすると、協定書において、本件固定残業制度が廃止された以上、本件未払割増賃金(残業代)問題も解決されたという可能性が考えられなくもない。
 しかしながら、そもそも「これに伴う諸問題」の中に本件未払割増賃金(残業代)問題が含まれていたかどうか明らかではない上、仮に、回答書作成時においては、「これに伴う諸問題」の中に本件未払割増賃金(残業代)問題が含まれていたとしても、回答書の作成時から協定書作成時まで三か月以上の時間が経過していて情勢の変化がありうるところ、固定残業制度の廃止については、同年六月二一日作成の都労委の斡旋案(〈証拠略〉)及び前記協定書に明記されているのに対し、本件未払割増賃金(残業代)問題に関する記載は前記の記載の他は全くないことや解決の具体的内容が前記の記載からは全く不明であること(〈人証略〉)からすると、本件未払割増賃金(残業代)問題について、訴外組合と被告との間で争わない旨の合意が成立したと認めることは到底できない。
 土方証人は、協定書締結により、本件未払時間外割増賃金(残業代)問題は全て解決したと証言するが、右の理由により信用できない。
 したがって、訴外組合の代理権の存否につき判断するまでもなく、被告の主張は理由がない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。