2009年8月11日火曜日

残業代請求

今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

四 本件割増賃金(残業代)請求権の消滅時効の成否について
1 被告は、原告らの本件割増賃金(残業代)請求権のうち、本件が提訴された平成三年一二月一〇日から二年以上前に弁済期の到来したものは時効により消滅したと主張し、これに対し、原告らは、原告らが、被告に対し、平成二年七月二〇日到達の書面で本件未払割増賃金(残業代)等の請求をした(以下「本件催告」という。)ところ、被告は、検討のための時間的猶予を求め、その後の再々の原告らの請求に対しても、被告は、種々の言辞を弄して回答を引き伸ばし、結局平成三年七月五日に至って初めて支払うつもりはないと通告したきたのであって、このような事実経過に照らすと、被告が消滅時効を援用することは信義則に反し、権利濫用であって許されないと主張する。
2 そこで検討するに、平成二年七月二〇日から平成三年七月五日の間における本件未払割増賃金(残業代)問題に関する原・被告間(訴外組合の行為も含む。)の交渉等の経緯について、当事者間で争いのない事実及び証拠によって認められる事実は以下のとおりである。
(一)原告らのうち原告内田を除く一八名は、被告に対し、平成二年七月一九日付けで過去の未払いの時間外割増賃金(残業代)等の支払いを請求する旨通知し、同月二〇日、被告に到達したが(〈証拠略〉)、被告は、同月二五日、検討のための回答のしばらくの猶予を求めた(〈証拠略〉)。
(二)原告らは、被告に対し、同年八月三一日付け(〈証拠略〉)及び同年一二月一二日付け(〈証拠略〉)で前同様の支払請求を通知したのに対し、被告は、原告らに対し、同月二七日付けで、右二通の通知書につき被告は鋭意検討中であること、原告ら主張の請求について具体的な金額を指摘されるべきこと及び固定残業制度の廃止に向けての協議をとり行いたいこと等を通知した(〈証拠略〉)。
(三)平成三年一月一一日、訴外組合は、被告に対し、平成二年に通知済みの未払いの時間外割増賃金(残業代)を請求している原告らの入社時から平成二年六月まで(退職者は退職時まで)の勤務時間の一覧表を提出することを求め、もし提出されない場合は労働基準監督署へ訴えることを通知した(〈証拠略〉)。
(四)同月一八日、原告是村及び同堀田と被告土方総務本部長(以下「土方本部長」という。)及び星野常務との間で交渉がもたれた。
(五)原告らは、被告に対し、同月二一日付けで、平成二年七月二〇日到達の書面に基づく未払賃金の請求に関して、法的に認められる範囲の未払賃金等についての支払いを拒否するものではなく、今後継続して協議する意向であることを双方で確認した旨及び原告らの時間外労働(残業)に関する計算の基礎となる資料の明示についても誠意をもって検討するとの回答が得られた旨を通知した(〈証拠略〉)。
(六)被告は、原告らに対し、同月二三日、右(五)の通知が事実に反すること及び原告らの未払いの時間外割増賃金(残業代)等について具体的に金額を指摘されるべきこと及び固定残業制度の廃止に向けての協議をとり行いたいこと等を通知した(〈証拠略〉)。
(七)被告は、訴外組合に対し、同月二五日、被告は未払いの時間外割増賃金(残業代)については訴外組合から何らの通知も受けたことがない旨及び固定残業制度の廃止に向けての協議をとり行いたい旨を通知した(〈証拠略〉)。
(八)被告は、訴外組合に対し、同月二九日、固定残業制度の廃止等について速やかに協議したい旨申入れたが(〈証拠略〉)、訴外組合は右申入書の受領を拒否した。
(九)訴外組合は、被告に対し、同年二月一二日付けで、原告らの過去の勤務時間の一覧表の提出を求める旨通知した(〈証拠略〉)。
(一〇)被告は、訴外組合に対し、同年三月一九日、労働時間を短縮すること、但し、固定残業制度の廃止及びこれに伴う諸問題の解決を条件とする旨通知した(〈証拠略〉)。また、被告は、訴外組合に対し、同月二五日、同年三月一九日付け回答書等について、同年四月一五日までに一括して訴外組合の同意を得たい旨通知した(〈証拠略〉)。
(一一)被告は、訴外組合に対し、同年四月一八日、固定残業制度の廃止及びこれに伴う諸問題の可及的速やかな解決を申入れた(〈証拠略〉)。
(一二)同年五月三〇日、訴外組合が申請した都労委における第一回斡旋期日において、被告は、都労委に対し、原告らの過去の未払割増賃金(残業代)問題についても斡旋を依頼し、都労委の斡旋委員は、被告及び訴外組合に対し、この問題をどう考えるのか等について検討するよう指示した(〈証拠略〉)。
(一三)同年六月一一日の都労委における第二回斡旋期日において、被告は、都労委に対し、原告らの過去の未払割増賃金(残業代)問題についても斡旋を依頼した(〈証拠略〉)。
(一四)同月二一日、都労委における第三回斡旋期日において、被告及び訴外組合は、都労委の示した斡旋案(〈証拠略〉)を受諾したが、右斡旋案においては、本件未払割増賃金(残業代)問題については触れるところがない。
(一五)同月二八日、被告と訴外組合は、協定書(〈証拠略〉)を締結したが、その九項には「一九九一年三月一九日・・・付け回答書の通りである・・・。」との記載がある。

企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。