2009年6月22日月曜日

残業代請求

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

二 争点2について(原告薄及び同小峰の展覧会の会場での労働に事業場外みなし労働時間制の適用があるか)
1 被告は、就業規則三二条二項但書が、プロモーター社員につき「事業所外勤務のため、前項の終業時刻を越えた場合、通常の労働時間勤務したものとみなす」と規定しているので、プロモーター社員である原告薄及び同小峰には、展覧会における展示販売の場合の所定時間外労働(残業)は発生しない旨を主張する。そこで、右展示販売が労基法三八条の二で規定する要件に該当するか否かを検討する。
2 展覧会における展示販売の状況等については、証拠(〈証拠・人証略〉、原告平、原告小峰)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一)被告の本社又は各支店は、年間に数回程度、画廊やホテル等の特定の会場を設けて絵画の展覧会を行い(会場の開閉時間は定められている)、右会場内でプロモーター社員らにより、絵画の展示販売を行っている。
(二)展覧会における展示販売は、プロモーター社員らの通常の販売活動をより容易にして売上を増加させること、そして被告の売上を増加させることを目的としており、被告の業務として行われている。被告は、展覧会の展示販売を行うに際し、プロモーター社員に参加するように働き掛けるものの、参加を強制することはなく、参加しないことによりペナルティーを課すことはない。
(三)被告は、展覧会の企画の段階で、売上目標、販売人数、顧客の予想等を具体的に立案し、プロモーター社員らが顧客に招待状や案内状を送って集客に努めるように推進している。また、被告の支店長等は、現場責任者として展覧会の会場に赴いている。
(四)プロモーター社員は、展覧会での展示販売に参加する場合、会場内で顧客の対応をするため、原則として会場を離れることはなかった。
3 労基法三八条の二は、事業場外で業務に従事した場合に労働時間を算定し難いときは所定労働時間労働したものとみなす旨を規定しているところ、本来使用者には労働時間の把握算定義務があるが、事業場の外で労働する場合にはその労働の特殊性から、すべての場合について、このような義務を認めることは困難を強いる結果になることから、みなし規定による労働時間の算定が規定されているものである。したがって、本条の規定の適用を受けるのは労働時間の算定が困難な場合に限られるところ、本件における展覧会での展示販売は、前記二2で認定のとおり、業務に従事する場所及び時間が限定されており、被告の支店長等も業務場所に赴いているうえ、会場内での勤務は顧客への対応以外の時間も顧客の来訪に備えて待機しているもので休憩時間とは認められないこと等から、被告がプロモーター社員らの労働時間を算定することが困難な場合とは到底言うことができず、労基法三八条の二の事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合でないことは明らかである(したがって、就業規則三二条二項但書のプロモーター社員について、事業場外での業務について、通常の労働時間勤務したものとみなす旨の規定は、労働時間の算定が困難な場合に限っての規定と限定して解釈する限りにおいて有効と認められる)。なお、被告はプロモーター社員が展覧会での展示販売へ参加するか否かは自由であり、また展示販売の時間中は自由に利用できる休憩時間を増やし、労働時間を増やすことのないように指導していると主張するが、展示販売は被告の業務として行われているものであるし、プロモーター社員が展示販売業務に従事しているか否かを把握して労働時間を算定することは、右のとおり本来容易に出来ることであるから、この点に関する被告の主張は理由がない。
4 したがって、原告薄及び同小峰には事業場外みなし労働時間制の適用により、展覧会における展示販売の場合の所定時間外労働(残業)は発生しない旨の被告の主張は理由がない。
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