2011年3月1日火曜日

不当解雇(リストラ)

今回は、不当解雇(リストラ)に関する判例を紹介します。 

第2 事案の概要
1 本件は、被告を定年退職した原告が、被告に対し、再雇用を希望する旨の意思表示をしたところ、被告がこれを拒否したが、同拒否の意思表示は正当な理由を欠き無効であるから、被告との間で平成21年4月1日付けで再雇用契約が締結されていると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める事案である。
2 争いのない事実
(1)当事者
 被告は、東京大学における研究とその成果の発表を助成し、又は民間出版社において採算上刊行を引受けないような優良学術図書の刊行、頒布、内外学術資料の蒐集及び学術講演等の事業を行い学術の振興文化の向上に寄与することを目的とする財団法人である。
 原告(昭和23年(月日略)生)は、昭和48年7月に被告との間で雇用契約を締結して被告に就職し、平成21年3月31日に被告を定年退職した者であり、被告に在職中、一貫して編集局に所属し、社会学、宗教学、教育学、文化人類学等の社会科学・人文科学の分野の学術書・教科書又は教養書の編集に携わった。
(2)法令等の定め
ア 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、単に「法」という。)9条1項は、定年(65歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、当該定年の引上げ(1号)、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。)の導入(2号)、当該定年の定めの廃止(3号。1号ないし3号に掲げる措置を「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならないと規定している。また、同2項は、事業主は、当該事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入したときは、前項2号に掲げる措置を講じたものとすると規定しているほか、法附則5条1項は、高年齢者雇用確保措置を講ずるための準備期間として、一定の期間、事業主は、9条2項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わないときは、就業規則その他これに準ずるものにより、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入することができ、この場合には、当該基準に基づく制度を導入した事業主は、9条1項2号に掲げる措置を講じたものとみなすと規定している。
イ 被告の就業規則(平成18年4月1日実施。以下「就業規則」という。)は、職員が定年に達したときは、定年に達した日をもって退職とする(33条(1))、職員の定年は、満60歳の誕生日を経過して、なおかつ3月31日か9月30日のいずれか近い日とする(35条1項)、定年退職者の再雇用については、法9条2項に基づく労使協定により、「再雇用契約社員就業規則」を別に定めると規定している。
ウ 就業規則35条2項に基づき定められた再雇用契約社員就業規則(平成18年4月1日実施。以下「再雇用就業規則」という。)は、被告を定年退職した職員のうち再雇用を希望する者について、その取扱い、条件等を定めるものである(1条)と規定した上、被告は、定年退職者で再雇用を希望することを5条の定めにより事前に申し出た者で、(1)健康状態が良好で、8条(勤務日、勤務時間)に定める勤務が可能な者、(2)再雇用者として通常勤務ができる意欲と能力がある者を再雇用する(3条)、再雇用者は契約社員とする(4条1項)、再雇用の契約期間は1か年とし、原則として所定の年齢に達するまで更新することができる(同2項)、再雇用を希望する者は、退職予定日の2か年前までに、総務部長宛に「再雇用希望申請書」を提出するものとし、(1)面接、(2)被告が指定した健康診断結果の提出手続を定年退職日の6か月前までに完了しなければならない(5条)と規定している。
なお、不当解雇(リストラ)について専門家に相談したい方は、不当解雇(リストラ)に強い弁護士に相談してください。また、企業の担当者で、従業員の解雇についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、保険会社との交通事故の示談交渉刑事弁護を要する刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。