2010年12月6日月曜日

交通事故(後遺障害逸失利益)についての裁判例

交通事故の裁判例です。交通事故の示談や慰謝料の相談については弁護士にすることをお勧めします。また、企業の従業員による交通事故の処理については、企業の顧問弁護士にご相談ください。後遺障害逸失利益について、証拠(甲二ないし一二、一九ないし二一、原告法定代理人、調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、本件交通事故による原告の頭部神経症状につき、次の事実を認めることができる。原告は、本件交通事故発生直後に水島第一病院に入院した時点では、外傷性くも膜下出血、脳幹損傷等により意識がなく、高次脳機能については不明であったところ、その後、徐々に意識を回復するにつれて、不穏状態や幼稚な言動が見られた。平成九年一〇月一三日の頭部CT検査では、右前頭部に硬膜下水腫の貯留が認められたが、脳実質内に明らかな病変は認められなかった。そのころの原告は、小学四年生ないし五年生程度の知能と思われる状態であった。原告は、平成九年一〇月三一日に岡山療護センターに転院したところ、その際の頭部CT検査では、やはり右前頭部に硬膜下水腫が認められ、軽度の意識障害及び失見当識があり、本件交通事故以前の記憶は残存していなかったが、入院期間中に次第に意識障害は消失して意識清明となり、これに伴って、意識障害下に存在したものと思われる知能低下も回復した。原告は、平成一〇年一月二〇日の同センター退院時には、意識障害は消失していたが、情緒及び性格面の不安定さが残った。原告は、平成一〇年四月一二日から平成一一年二月一七日まで京都医療少年院に入院し、同院での検査では新田中B式によるIQが六六で、記憶障害が認められ、健忘症状、抑うつ状態のほか、衝動性や自制力低下、幼稚化等の性格変化が認められたが、同院入院中は、規則に基づく療養生活と薬物(気分安定化剤としての抗けいれん剤)療法により興奮状態となることはなく、抑うつ症状によって内的に不安定となることがある程度の状態であった。原告は、平成一一年三月一九日に症状固定となったが、その時点では、頭部神経症状として外傷性くも膜下出血の後の抑うつ状態があるものと診断され、くよくよ悩む、他人が自分の悪口を言っている気がするといった自覚症状があった。原告は、平成一一年四月に後楽館高校に入学したが、原告自身自分で自分の気持ちを抑えることができず、教師に暴力を振るいそうになったこともあって、退学を勧められ、平成一二年一月に同校を自主退学し、その後、種々アルバイトをしているが、勤務先で物覚えが悪いとの指摘を受け、勤務先を転じており、家庭においても、集中力に欠け、感情の起伏が激しい状態にある。右の事実によれば、原告の頭部の神経症状は、本件交通事故直後は重篤なもので、水島第一病院入院中は意識障害とそれに伴う知能の低下が見られたが、岡山療護センター入院中に意識障害が回復するにつれて知能レベルも回復し、同センター退院時には、意識障害は消失して、情緒及び性格面の不安定さが残り、京都医療少年院入院においては、興奮状態となることはなかったが、抑うつ症状は残り、症状固定時においても、抑うつ状態が残っていて、これにより、服することができる労務が相当な程度に制限されるとまでは認められないものの、抑うつ状態により集中力を欠き、情緒が不安定となる点で、等級表一二級一二号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に相当する後遺障害があるものと認められる。証拠(甲二、五ないし九)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件交通事故により、右の頭部神経症状のほかに、右大腿骨骨折後の右下肢一・五センチメートルの短縮、右下肢痛、右第五指の機能障害(腱側可動域が二分の一以下)、右第四指機能障害、右膝不安定性及び右上肢及び右下肢の創痕の後遺障害が残り、このうち、右下肢短縮の点は「一下肢を一センチメートル以上短縮したもの」として等級表一三級九号に該当し、右第五指の機能障害(腱側可動域が二分の一以下)は「一手のこ指の用を廃したもの」として等級表一四級六号に該当し、その余の後遺障害は等級表の後遺障害には該当しないものと認められるから、本件交通事故による原告の後遺障害は、前記の一二級相当の頭部神経症状に右各後遺障害を併合して全体で等級表一一級に相当するものと認められる。原告は、前記のとおり、本件交通事故当時、一六歳の健康な男子であって、平成九年三月に倉敷市立福田中学校を卒業した後、型枠大工、とび職として働き、一か月二〇万円前後の収入を得ていたことが認められるから、原告は、賃金センサス平成九年産業計・企業規模計・中卒男子労働者全年齢平均年収五一〇万一七〇〇円程度の年収を就労可能期間を通じて得る蓋然性があったものと認められ、右年収額を逸失利益算定の基礎とするのが相当であり、前記後遺障害の程度に鑑み労働能力喪失率を二〇パーセントとし、原告が右のとおり本件交通事故当時既に働いて収入を得ていたことから、症状固定時の原告の年齢である一七歳から六七歳までの五〇年間を労働能力喪失期間とするのが相当であり、五〇年に対応するライプニッツ係数一八・二五五九を乗じて年五分の割合による中間利息を控除すると、原告の後遺障害による逸失利益は、一八六二万七二二五円となる。顧問弁護士にご相談ください。また、個人の方で、交通事故、借金返済残業代請求不当解雇刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。