2009年9月22日火曜日

時間外勤務

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

五 争点5について(原告小峰のほるぷ会出席が業務によるものか)
1 原告小峰は、平成四年一〇月一〇日に、佐渡で開催された首都圏ほるぷ会総会へ出席し、これに関して土曜休日に業務を行ったものであるとして賃金請求をしているところ、被告は、右首都圏ほるぷ会総会への出席は業務ではないので、賃金支払義務はない旨主張するので判断する。
2 証拠(〈証拠・人証略〉)及び弁論の全趣旨によれば、首都圏ほるぷ会は一定の売上成績を有するプロモーター社員の会員によって構成されていること、会員になるためには被告の表彰規定に基づく売上実績が必要でその入会決定も被告が行うしくみになっていること、会員になると売上に応じて会員手当が支給され、被告の入社案内のパンフレットにも右手当が給与の一部として記載されていること、事務局の実際の仕事は被告の支店長(会員ではない)が行い、その指示のもとに被告支店の従業員(会員ではない)が宿泊等の手配を行っていること、総会の開催費用は給与天引きによって毎月積み立てられる会員の会費と参加一時金によって賄われること、総会には被告の役員が出席し、営業責任者が講演を行っていること等が認められ、首都圏ほるぷ会自体が被告におけるプロモーター社員の販売促進をも目的としてつくられた被告の業務に関連する団体であるものと認められる。しかしながら,平成四年一〇月一〇日の首都圏ほるぷ会の佐渡における総会への参加については会員の自由参加であり、現実にも六〇人程度の会員のうち一五人程度は欠席であったこと、参加費用は個人負担であり、総会前後の平成四年一〇月九日と一〇月一一日は全て移動と観光に費やされていること、そして総会当日の一〇月一〇日の日程をみても観光等に費やす時間が大部分であり、総会自体は午後三時三〇分から六時までの二時間三〇分であるうえ、総会の内容に役員の挨拶や被告の営業担当者による講演があるものの、これをもって総会自体が被告による研修等の業務とまでは認めがたいこと等(なお、首都圏ほるぷ会の会則上は会員の親睦等を図ることを目的としており、会長等の役員はプロモーター社員である会員から選出され、ほるぷ会の会員へ売上実績で支給される手当は賃金規定ではなく表彰規定に基づくものである)を考慮すると、原告小峰の首都圏ほるぷ会総会への出席が業務とは認められないから、この点に関する原告小峰の賃金請求は理由がない。

六 原告平の請求について
1 被告は、原告平に対し、法内残業時間(所定労働時間を超えて法定労働時間内のもの又は法定休日以外の休日の法定労働時間内のもの)については、通常の労働時間の賃金を、法外残業時間(法定労働時間を超えるもの又は法定休日におけるもの)については、右賃金の三割増(四級以上給与規定二二条四項〔〈証拠略〉〕)の割増賃金(残業代)を支払う義務があるところ、右の一時間当たりの賃金額(但し割増前のもの、以下、時間給ともいう)を検討する。 
 右時間給計算の基礎となる一カ月の原告平の給与額について、年令給、資格給、業績手当、地域手当及び住宅手当がこれに含まれることについては当事者間に争いがないが、被告は、これに職務手当が含まれない旨を主張するので判断する。四級以上給与規定二二条六項〔〈証拠略〉〕は時間給の計算方法について、職務手当を除く右五項目の給与額の合計を基礎とする旨を定めている。しかしながら、職務手当は、労基法三七条二項及び労基法施行規則二一条で定められた割増賃金(残業代)の基礎となる賃金から除外することが許されている賃金に含まれないことは明らかであるから、職務手当も右計算の基礎として加算すべきものである(なお、右法令の趣旨を考慮すれば、法内残業に関する賃金算定の場合の基礎金額(割増をしないもの)についても、同様の方法で算定されると解される)。したがって、時間給は、一か月の年令給、資格給、業績手当、地域手当、住宅手当及び職務手当の合計額を一か月の所定労働時間である一四八時間(四級以上給与規定二二条六項〔〈証拠略〉〕、また右時間数については当事者間に争いがない)で除したものとなり(労基法施行規則一九条一項四号)、法内残業については、右時間給に法内残業時間数を乗じた額、法外残業については、右時間給の三割増の金額に法外残業時間数を乗じた額が、被告が原告平に支払うべき金額となる。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。