2009年5月28日木曜日

時間外勤務

今回は、サービス残業の残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

第三 争点に対する判断
一 争点1について(原告平が労基法四一条二号の管理監督者の地位にあたるか)
1 被告は、原告平が労基法四一条二号の管理監督者に該当し、労基法三七条(時間外、休日及び深夜の割増賃金(残業代))の適用を受けないうえ、就業規則の適用に関しては四級以上給与規定一条の「特に定める場合」に該当するため、二二条に定める時間外及び休日手当に関する規定の適用を除外されているから、時間外及び休日手当の請求ができない旨を主張する。そこで、原告平が労基法四一条二号の管理監督者に該当するか否かを検討する。
2 原告平の地位等については、証拠(〈証拠・認証略〉)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一)原告平は、昭和五三年四月に営業社員として被告に入社し、昭和五七年九月に資格四級となり、相模原営業所販売課長(資格給及び職務手当合計〔以下、資格給等という〕四万七五〇〇円)、昭和五八年四月に小田原営業所販売課長(資格給等五万円)、昭和五八年四月に小田原営業所長(資格給等五万五〇〇〇円)、昭和五九年四月に藤沢営業所長(資格給等五万六〇〇〇円)、昭和五九年七月に東京支店図書館担当(資格給等五万一〇〇〇円)、昭和六一年二月に東京支店販売主任(資格給等五万二〇〇〇円)、昭和六二年五月に東京南支店(東京支店分割)販売主任(資格給等五万六五〇〇円)、平成四年九月に東京支店(南北支店統合)販売主任(資格給等六万二五〇〇円)となった。なお、昭和五七年七月以降、売上高の三パーセントの報奨金が支払われていた(但し東京支店図書館担当の時期を除く)。
(二)被告の資格規定(社員四級以上)は、管理監督職、専任職、指導職、一般職を規定し、販売主任は指導職の中に位置して、「販売に関する実務知識、技能と経験を生かして部下の指導育成を行う職種群」とされ、資格四級の営業社員の要件として「担当業務の方針と実施計画を自主的に立案できる、専門的な調査分析と企画・立案ができる、三級以下の者の能力、人柄、適性を把握し、適切な指導教育できる、経営方針に則り管理者としての自覚と旺盛な意欲をもって業務向上に貢献しうること」等を定めている。
(三)東京南支店は、平成三年から平成四年当時、支店長及び原告平の他に、佐藤課長(プロモーター社員)の下にプロモーター社員が三名、吉田課長(プロモーター社員)の下にプロモーター社員が二名、その他に事務員等が在籍していた。東京南支店長は、平成元年一月から平成二年一二月まで大薮、平成三年一月から平成四年三月まで安田、平成四年四月から同年七月まで上田宗博、同年八月が安田、同年九月以降清水政志であった。大薮は首都圏営業推進役で東京北支店長を兼務していたが原則として東京南支店を拠点としており、安田は平成三年一月から三月は東京南支店にいたが、同年四月以降は兼務していた東京西支店におり、月に数日間東京南支店に出勤していた。
(四)原告平は、安田が東京南支店に常駐していない時期には、売上集計等を行って安田に報告し、支店内の週間会議の打合せのまとめや月の会議の資料作成等を行い、首都圏地区支店長会議にも出席することがあった。また、支店内の朝礼は、原告平、吉田、佐藤及び沼(プロモーター社員で主任)が交代で行い、原告平が安田からの連絡事項等を伝えていた。
(五)原告平は、平成三年四月当時在籍していた新入社員の田代潔のタイムカードの確認印を押していたが、吉田、佐藤及び沼等のタイムカードの確認印はそれぞれ各人が押印していた。また、原告平もタイムカードにより勤怠管理を受けていた。
3 労基法四一条二号にいう管理監督者とは、労基法が規制する労働時間、休憩、休日等の枠を超えて活動することが当然とされる程度に、企業経営上重要な職務と責任を有し、現実の勤務形態もその規制になじまないような立場にある者を言い、その判断にあたっては、経営方針の決定に参画し、あるいは労務管理上の指揮権限を有する等経営者と一体的な立場にあり、出退勤について厳格な規制を受けずに自己の勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか否か等を具体的勤務実態に即して検討すべきものである。
 これを本件についてみるに、前記一2で認定のとおり、原告平は、資格四級で(経営方針に則り管理者としての自覚と旺盛な意欲をもって業務向上に貢献しうること等が右資格要件として定められている)、過去に営業所長を経験して足切り措置なく販売奨励金の支給を受け、東京南支店では支店長が常駐していなかったために、売上集計や支店内会議の資料の作成等を行い、朝礼において支店長からの指示事項を伝え、首都圏地区支店長会議に出席することもあり、新入社員のタイムカードに確認印を押していたことが認められる。しかしながら、前記一2で認定のとおり、原告平は、タイムカードにより厳格な勤怠管理を受けており、自己の勤務時間について自由裁量を有していなかった。また、前記一2で認定のとおり、東京南支店の吉田課長、佐藤課長及び沼主任らのタイムカードの確認印はそれぞれ各人が押印しており、原告平が勤怠管理を行っていたものではないこと、原告平が売上集計や支店長不在時の会議の取りまとめ、支店長会議への出席あるいは朝礼時に支店長からの指示事項を伝えることはあっても、支店営業方針を決定する権限や、具体的な支店の販売計画等に関して独自に佐藤課長及び吉田課長に対して指揮命令を行う権限をもっていたと認めるに足りる証拠はないことから、原告平が被告の経営方針の決定に参画する立場になかったことはもちろん、労務管理上の指揮権限を有する等経営者と一体的な立場にあったものとも認められない(なお、被告は、原告平が足切り措置なく報奨金の支給を受けている点、過去に営業所長であった点を指摘するが、小田原営業所の販売課長であったときに労基法上の管理監督者であったと認めるに足りる証拠はないところ、前記一2で認定のとおり、右時期も足切り措置なく報奨金の支給を受けていたし、小田原営業所販売課長から小田原営業所長になったときに資格給は五〇〇〇円しか増加していない点等を考慮すると右営業所長が労基法上の管理監督者にあたるか自体にも疑問がある)。
4 したがって、原告平が管理監督者であるから時間外及び休日手当を請求できる地位にない旨の被告の主張は理由がない。
企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉解雇刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。