2011年3月4日金曜日

不当解雇(リストラ)

今回は、不当解雇(リストラ)について判断している裁判例を紹介します(つづき)。 

第3 争点に対する判断
1 争点(1)(再雇用就業規則3条の趣旨)について
(1)再雇用就業規則3条は、定年退職者の再雇用の条件として、被告は、定年退職者で再雇用を希望することを5条(再雇用の手続)の定めにより事前に申し出た者で、健康状態が良好で、8条(勤務日、勤務時間)に定める勤務が可能な者、再雇用者として通常勤務ができる意欲と能力がある者に該当する者を再雇用すると規定しているところ、以下、再雇用就業規則3条の解釈として、被告が同条所定の要件を満たす定年退職者の再雇用を拒否することが許されるか否か(再雇用拒否の意思表示についての解雇権濫用法理の類推適用の可否)について、検討する。
(2)争いのない事実に加え、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 法1条は、「この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図る」ことなどを目的とする旨規定し、法3条1項は、法の基本的理念として、「高年齢者等は、その職業生活の全期間を通じて、その意欲及び能力に応じ、雇用の機会その他の多様な就業の機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとする」と規定し、以上の目的及び基本的理念を受け、法4条1項は、事業主の責務として、「事業主は、その雇用する高年齢者について職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備を行い、並びにその雇用する高年齢者等について再就職の援助等を行うことにより、その意欲及び能力に応じてその者のための雇用の機会の確保等が図られるよう努めるものとする」と規定している。
イ 法附則4条2項は、「定年(65歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主は、平成25年3月31日までの間、当該定年の引上げ、継続雇用制度の導入又は改善その他の当該高年齢者の65歳までの安定した雇用の確保を図るために必要な措置を講ずるように努めなければならない」と規定している。
ウ 被告は、法附則4条2項及び5条の趣旨を踏まえ、財団法人東京大学出版会労働組合(以下「本件組合」という。)との間で、再雇用就業規則の制定に向けて協議することとし、平成18年2月23日、原則として労使の合意を前提とした制度作りをすること、資金(人的資源)バランスへの考慮と新人採用の継続に留意しつつも、経営側が「再雇用」の努力をすることなどを確認した。その際、再雇用の条件としては、原則として、希望する者を再雇用することとし、健康状態に関する医師の診断書は必要とされたものの、その他の条件の採否については、いったん留保された。
エ その後、被告は、同年4月5日、本件組合に対し、「再雇用契約社員就業規則(案)」を提示し、再雇用就業規則の運用に当たっては、再雇用を希望する定年退職者を排除的に運用しないとの説明をした。そこで、本件組合は、内部で対応を検討したが、案文が法の趣旨を損なうものではないことや被告の上記説明を好意的にとらえ、被告提示の案文を中心に検討することとし、同年6月26日、被告との間で、再雇用就業規則施行に当たって、〔1〕再雇用就業規則に基づいて実際の運用例が発生した場合、被告は本件組合の求めに応じて、希望状況・就労条件などの情報を提供する、〔2〕再雇用就業規則を運用するに当たって、被告・本件組合それぞれに問題が発生した場合には、双方で協議するとの内容の協定書(書証略)を取り交わしたものの、労使協定によって、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準は定められなかった。
オ 再雇用就業規則は、上記ウ及びエ記載の被告と本件組合との労使交渉を経て制定され、同年4月1日にさかのぼって実施されるに至った。
カ 再雇用就業規則の実施後に再雇用の対象となった定年退職者のうち、原告以外に再雇用を拒否された者はいないことがうかがわれる。

なお、不当解雇(リストラ)についてお困りの方は、専門家に相談すべきですので、不当解雇(リストラ)について弁護士に相談してください。また、企業の方で、残業代請求などについてご不明な点があれば、顧問弁護士にご相談ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士費用やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。その他にも、個人の方で、交通事故の示談交渉刑事弁護を要する刑事事件借金の返済敷金返却や原状回復(事務所、オフィス、店舗)遺言や相続などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。