2009年5月22日金曜日

残業代請求

今回は、残業代請求に関する判例を紹介します(つづき)。 

5 争点3について
(一)被告の就業規則四〇条一項には、「会社は業務の都合上、やむを得ない場合、従業員の一部又は全部について前三七、三八条の休日を他の日と振替えることがある。」と規定しているところ、展覧会での展示販売の場合(但し土曜日が休日の場合及び日曜日の場合)には、「業務の都合上、やむを得ない場合」として休日を振り替えたものであり、休日手当は発生しない。
(二)被告においては、展覧会終了日の翌日ないし翌々日を休日として振替えることが慣行として確立していた(例えば土曜展覧会だけの場合には翌週の月曜日、土曜展覧会及び日曜展覧会の場合には翌週の月曜日及び火曜日が振替休日)。したがって、事前に振替休日を特定した指定がなされていたものであるから、休日手当は発生しない。実際にも被告の水戸支店、埼玉支店、長岡支店では展示販売の翌日ないし翌々日が振替休日となっていたし、東京南支店長(ママ)も同様の取扱いをしていた。また、原告小峰が平成四年六月二〇日の出勤について、事前の同月五日の振替休日をとっているが、これは右慣行が確立しているから、このような取扱いができたものである。
(三)原告薄主張の平成四年三月二九日の書店(横浜有隣堂西口店)での特販支援については否認する。これは、原告薄の売上が低迷して辞めたい旨の話があったため、売上向上のために神奈川特販営業所へ配転することを予定し、本人の希望によりその研修として書店での展示販売に従事させたものであり、右事情及び本来休日振替で処理されるべきものであったこと等に照らすと権利濫用にあたる。
6 争点4について
(一)被告は、原告平及び同薄に対し、展覧会以外の土曜休日に出勤するように指示命令した事実はないので賃金を支払う義務はない。
(二)原告平の土曜休日出勤は、いずれも土曜日にどうしても訪問販売の活動に従事しなければならないものではないし、売上の集計、報告等の作業も土曜休日に行わなければならない事情はなく、被告が原告平にノルマを課したこともないので、被告が土曜休日出勤について、明示の指示はもちろん黙示の指示をしたこともないことは明らかである。
(三)原告薄の土曜休日出勤は,いずれも土曜日にどうしても訪問販売の活動に従事しなければならないものではないし、被告が原告薄にノルマを課したことはなく、また月次目標を達成しないときでもペナルティーを課したことはない。被告は、原告薄のようなプロモーター社員に対してロス時間をなくし密度の濃い販売活動を行い、短い労働時間で高い販売実績を上げるように求めているのであり、それ以上に土曜休日出勤を求めてはおらず、現実にも原告小峰は全く土曜休日出勤を行っていないことからも、被告が土曜休日出勤について、明示の指示はもちろん黙示の指示をしたこともないことは明らかである。また、被告は、原告薄に対し、平成三年一一月一六日の本社研修会への出席を強制した事実もない。 
7 争点5について
 原告小峰の所属していた首都圏ほるぷ会は、被告の組織とは関係のない親睦団体であり、この総会への出席は被告の業務にはあたらない。すなわち、被告の安田進(以下、安田という)推進役は参与会員として加入しているに過ぎず、大薮誠二(以下、大薮という)役員は来賓として総会に出席したものであり、総会は会員の親睦のためのもので被告の主催ではなく、総会への出欠も会員の自由で、現実に欠席者も多いのであるから、ほるぷ会総会への出席は業務ではない。したがって、被告は原告小峰に平成四年一〇月一〇日の賃金の支払義務はない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談交渉刑事事件多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題オフィスや店舗の敷金返却(原状回復)などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。