2009年7月20日月曜日

時間外勤務手当

今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。

三 争点3について(原告らについて適法な休日振替がなされているか)
1 被告は、就業規則四〇条一項に「会社は業務の都合上、やむを得ない場合、従業員の一部又は全部について前三七、三八条の休日を他の日と振替えることがある。休日を振替える場合は、事前に代休日〔振替休日の意味〕を指定する」と規定しているところ、休日展覧会(土曜日が休日〔法定休日の趣旨ではない〕の場合及び日曜日の場合、以下同じ)での展示販売の場合は、業務の都合上やむを得ない場合として休日を振り替えたものであり、被告においては、休日展覧会終了日の翌日ないし翌々日を休日として振り替えることが慣行として確立していたから、原告らが休日手当(但し法定休日以外で所定内労働時間部分については法内賃金)を請求することはできない旨を主張する。
 就業規則において休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合に休日を振り替えることができる旨の就業規則等を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となるので休日に労働させたことにはならないものと認められるところ(休日に労働させた後に勤務を要しない代休を与えたとしても休日振替がなされたものとは認められない)、被告は就業規則四〇条一項で休日振替について規定している(〈証拠略〉)。そこで、(1)被告には休日展覧会における展示販売の場合に展覧会終了日の翌日ないし翌々日を休日として振り替える旨の慣行が存したか否か、(2)原告らが休日展覧会での展示販売に従事した各休日につき、個々的に休日振替がなされたか否かについて検討する。
2 被告は、休日展覧会における展示販売の場合に展覧会終了日の翌日ないし翌々日を休日として振替える旨の慣行が存した旨の主張をするところ、被告の水戸支店、埼玉支店及び長岡支店においては、右のとおり休日振替を行う旨の取扱いについて被告と当該事業所の従業員との間で合意(少なくとも黙示の合意)が存したと窺われる(〈証拠略〉)ものの、原告平が所属していた東京南支店並びに原告薄及び同小峰が所属していた東京西営業所においては、休日展覧会での展示販売が行われた場合に、展覧会終了日の翌日ないし翌々日も現実には原告らが出勤している場合がほとんどである(〈証拠略〉)こと等を考慮すると、右慣行の存在を述べる(人証略)の証言及び陳述書(〈証拠略〉)の記載は採用できず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。なお、被告は、原告小峰が平成四年六月二〇日の休日に代わって六月五日に事前に休んでいることをもって右慣行の存在を推認するものであると主張するが、後述のとおり、これはまさに事前に休日の振替が個別的になされた場合であり、東京南支店及び東京西営業所の前記認定の状況を考慮すれば、これをもって右慣行が存したものと言うことはできない。
3 被告は、原告平の平成三年四月一四日の休日展覧会での勤務に関し、同月一六日に有給休暇をとっているが、本来事前に休日振替を行うべきところ、これをしないであえて有給休暇をとったのであるから休日手当を請求できない旨の主張をするところ、前記認定のとおり慣行の存在は認められず、事前に休日振替がなされたことを認めるに足りる証拠もないから、この点に関する被告の主張は理由がない。また、原告平の平成四年五月一〇日の休日展覧会での勤務に関し、同月一四日に休日振替が行われたので休日手当を請求できない旨の被告の主張についても、前記認定のとおり慣行の存在は認められず、事前に休日振替がなされたことを認めるに足りる証拠もないから、この点に関する被告の主張は理由がないが、同月一四日に代休をとっているので、同月一〇日の六時間三〇分の労働時間について、割増部分である時間給の三割のみを請求できると解される(平成四年五月一〇日は法定休日)。また、原告平の他の休日展覧会での勤務に関しても、事前に休日振替がなされたと認めるに足りる証拠はない。
4 被告は、原告薄が(1)平成三年七月一四日の休日展覧会での勤務と(2)平成四年三月二九日の書店での展示販売の研修における休日出勤について、振替休日をとっていないことは、前記慣行を徒過して自らの権利を放棄したもので休日手当を請求できない旨の主張するところ、前記認定のとおり慣行の存在は認められず、事前に休日振替がなされたことを認めるに足りる証拠もないから、この点に関する被告の主張は理由がない(なお、(2)について、本人の希望で研修したものであり権利濫用であるとの被告の主張についても、被告の指揮監督下で業務として行われたものであり、右慣行の存在も認められないので理由がない)。また、原告薄の他の休日展覧会での勤務に関しても、事前に休日振替がなされたと認めるに足りる証拠はない。
5 被告は、原告小峰の(1)平成三年六月二三日の休日展覧会での勤務に関して同年七月二日に、(2)同年七月一四日について同月一五日に、(3)平成四年五月一〇日について同月一五日に、(4)平成四年六月二〇日について同月五日に、(5)平成四年六月二一日について同月二三日に、それぞれ事前に休日振替が行われた旨を主張する。しかしながら、前記認定のとおり慣行の存在は認められず、(1)ないし(3)及び(5)については事前に休日振替がなされたことを認めるに足りる証拠はないから、この点に関する被告の主張は理由がない(もっとも、いずれの日についても代休がとられているが、右各勤務日の労働時間については現実に勤務した労働時間ではなく、所定労働時間である六時間四五分以上を減じて請求しているので、右各日の休日手当の請求には理由がある)。(4)については、事前に休日振替がなされたものと認められる(〈証拠略〉)から、この点に関する被告の主張は理由がある。また、原告小峰の他の休日展覧会での勤務に関しては、事前に休日振替がなされたと認めるに足りる証拠はない。
6 したがって、休日展覧会における展示販売の場合には、休日振替により原告らには休日手当が発生しない旨の被告の主張は、原告小峰の平成四年六月二〇日については理由があるが、その余の被告の主張は理由がない。但し原告平の平成四年五月一〇日分の請求については、割増部分である時間給の三割の範囲で理由がある。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料金やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返却請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。